進化しそうになったらBボタン

正解じゃないと怖い

汗ばんだプリーツ

高校3年生の夏。

スカートを長くしようか短くしようか、どの制汗剤を使おうか。

くだらない悩みを鞄に詰め、汗ばんだ身体で、紺色のプリーツをはためかせて、会いたい人がいた。

 

「大事な時期」にガッコのお勉強をしなかった。

高校進学まではど田舎では良いとされる学歴を得ることができる程度のアタマはあった。

 

この先生きることなんか考えたくないと思っている時、逆らえない魅力に出会った。

真夏の、とても蒸す日の畳の部屋。

逃れ難い魅力、醜悪なほどの憧れが狭い部屋の中に満ちていた。

 

紺色のスカートは無意味な装備で、子供のあそびだった。そのあそびに、どんどん依存してゆく。簡単なことだ。

それは私が子供で背伸びがしたくて、境界を失くしたがる素養を持っていたから始まったことだ。寂しかった。

 

相手も病んでいた。必然的に、お互いの境目をなくそうとする力が働いた。

とても自然に、心地よく、溶け出していった。

相手が開示する自己が嬉しかった。私があなたになっていく、それがとても好きだった。

とても好きだった。

 

けれど、双方とも、少なくとも正常な判断のつく状態ではない。

あんまり暑い夏だから、事故など簡単に起こる。わかっていた。すべて予定調和だ。

けれど、紺色の私は好きを止められず、その人になりたかった。

けれど簡単に切り離されてしまった。全部仕方がないし、答え合わせをすれば正解だ。

 

だが、当時の私にとってそのことは、死ぬことと大差がなかった。

赤く落ち込む。紺色が怒りに染まり、プリーツははためかなくなる。

ただ、会いたかった。あなたになりたかった。

救って欲しかった、けれどそれは不可能だと18歳の私は知っていた。

彼も多分助けを求めていた側だから、どうしようもない泥沼でお互いを殺し合う結末が見えていた。けれど、それでもよかった、それがよかった。

 

私といないことは、私と生きないことは、とても正しい。あんまりにも正しいからちょっと悔しい。本当に幸せになって欲しいと思う。

 

ただ一緒に死んで欲しかった。約10年越しの、もう存在しないラブレター。